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「市場」ではなく「業務課題」を見る──ニッチ市場で選ばれ続けるBtoBマーケティングの考え方

2026年07月22日

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BtoBマーケティングでは、「市場をどう選ぶか」「競合とどう差別化するか」は、多くの企業が悩むテーマです。
クラウド型社内資産管理システム「Assetment Neo」は、市場規模が決して大きくない領域でありながら、大手企業を中心に高い支持を獲得しています。その背景には、「業界」ではなく「業務課題」を起点に市場を捉え、競合との違いを明確にする独自のマーケティング思想がありました。
今回は、サービスサイトリニューアルプロジェクトを通じて見えてきた市場戦略や差別化の考え方、そしてAI時代を見据えた情報発信について、代表取締役 古畑様にお話を伺いました。

なぜAssetment Neoは大手企業に選ばれるようになったのか

Assetment Neoが生まれた背景をお聞かせください。

古畑社長 Assetment Neoはもともとマーケットインではなく、プロダクトアウトから始まった製品です。受託開発で作ったものをベースに、これは製品として売れるのではないかと考えて製品化されて生まれたものです。
正直に言うとリリース当時はあまり売れていませんでしたが、お客様の要望に応じて機能を拡張していき一定の支持を得られてきました。結果として、多機能・高機能をUSPとして訴求できるようになりました。

大手企業の導入実績が多いですが、当時から、大手企業をターゲットにしていたのでしょうか?

古畑社長 製品化した当初は、大企業向けだけを意識していたわけではありません。ただ、結果的に作ったものが大企業に合うものになっていたのだと思います。私自身が前職を含めて30年ほど開発者として働いていた中で、運よく日本を代表するような大企業の案件に多く携わっていました。その経験を通じて、社内資産管理における大企業ならではの課題や、組織の責任所在、部門間の調整の難しさなどを肌で感じていました。
それを当時から明確に言語化できていたわけではありません。戦略的に最初から当てにいったというよりは、結果的に当たっていたという方が近いです。
ただ、お客様の要望に応じて機能追加し多機能・高機能化していった流れの中で、利用部門ごとに受け入れられる理由がまったく違うということが見えてきました。

具体的にはどのように違うのでしょうか?

古畑社長 Assetment Neoを利用する部門は、情報システム部門、経理部門、物品の貸出管理をしている部門の3部門あります。それぞれの部門ごとに、社内資産管理する目的も業務における課題も異なります。
たとえば経理部門においては、大手企業ならではの縦割りや派閥、責任所在の問題に対応する考え方が重要になります。一方で、貸出管理をする部門は、貸出管理をする部門ならではの非常にニッチな機能と専門性が求められます。

ターゲットは「業界」ではなく「業務課題」

ターゲット設計において古畑社長からは、「業界」という話はあまり出てこない印象があります。

古畑社長 経理の人には経理の課題があり、貸出管理部門の人には貸出管理部門の課題があります。その現場でどう使われるかを重視しています。それが真のニーズだと思うからです。
もし、うちが特定の業界に深く特化していたら、業界で切っていたかもしれません。ただ、製品の特性上、業界で切る概念があまりありません。社内資産管理は、業界に関係なく必要になるものだからです。
だから、試行錯誤しながら、部門や現場の業務に特化していったという方が近いです。

競合製品とは開発思想も違いそうですね。

古畑社長 アプローチが違うと思います。他社製品の多くは「業務」から入っているのではなく、「作業」から入っていると感じています。
業務にはプロセスがあります。業務フローがあり、これをやったら次にこれをやる、その前に承認を取る、という流れがあります。その中で、ここでこの作業をすべきだという話になるはずです。
一方で、他社製品はそのプロセス全体にはあまり触れずに、作業を解決しようとしているように見えます。これでは、部分的には解決できても、業務全体の解決にはならないと思います。

"違い"をどう伝えるか──差別化を可視化するマーケティング

マーケティング活動において悩んでいた点は何ですか?

古畑社長 お伝えした通りAssetment Neoのコンセプトは明確なのですが、そこをどう差別化として伝えるのかが、非常に悩んだところです。私は業務システムを作っているつもりでしたが、「作業」という切り口だけで見られると、競合製品と変わらないように見えてしまいます。
営業現場でも、お客様から「同じような製品ですよね」と言われることが多々ありました。

どのように解決していこうと考えたのでしょうか?

古畑社長 差別化要素が伝わりにくかった理由としては、それを伝えるためのアウトプットが少なかったことがあります。そのため、営業担当者も説明しきれていなかったのだと思います。
その上で、ターゲット部門ごとに分けて情報発信をしていこうと考えました。その形になった一つがシリーズ化したWebサイトです。

どのように解決していこうと考えたのでしょうか?

競合企業のマーケティング活動を見て、意識されることはありますか。

古畑社長 正直、ライバル会社がどこまでマーケティングをやっているかは、あまり把握していません。競合企業が何をやっているかよりも、自分たちの差別化や本質的な違いを定義できているかの方が重要だと思っています。

社内教育から生まれたマーケティング戦略

古畑社長 シリーズを分けたいと思ったのは、差異を明確にしたい、提供価値を分けたい、アプローチを分けたいという考えが背景にありますが、きっかけは中途入社教育もその一つでした。
中途入社者向けの教育を、私が担当していた時期があります。その中で「社内資産管理とは何か」を教育していました。当然ですが入社した人たちは、社内資産管理を知らない状態です。そこで「あなたが会社から社内資産管理をやれと言われた立場だったら、どう考えるか」と問いかけていました。
そのうえで、こういう場合はどう考えるか、どう進めるかを質問し、翌日のレビュー用に私が回答のパワーポイントを作って説明していました。手間はかかりましたが、それが今やっていることの根本になっていると思います。

「100点はない」──改善し続けるマーケティング思想

マーケティング活動をする上で大切にしていることは何ですか?

古畑社長 すべてにおいて、「絶対に改善できる余地がある」と考えることです。
私の仕事観のベースにあるのだと思います。経営者としても、マーケティングを考える立場としても、昔SEをやっていた頃からも、今やっている仕事が100点だと思っていません。不完全な状態として常に物事を見ているのだと思います。改善案が出たら、今までのものを捨ててでも、そちらの方が良いなら切り替える。そのことにあまり怖さはありません。
その根底があるので、周りの人は振り回されて大変だと思います(笑)

AIはBtoBマーケティングをどう変えるのか

今後のマーケティング活動を考える上で注目しているトピックはありますか?

古畑社長 一番大きいのは、ChatGPTやGeminiのようなAIの登場です。AIが台頭することによって、SEO対策なども大きく変わると思っています。
ブラウザで検索するという概念が、検索ではなく「相談」になっていくのではないでしょうか。単語ではなく文章で入力し、AIとやり取りしながら答えを探すことが普通になると思います。
これまでは、お客様が自分の中で課題を整理し、それを言葉にし、キーワード化して検索していました。しかし、今後は「こういう問題があるのだけど、どうしたらいいか」という相談から始まるようになる。
AIとやり取りを重ねながら、「うちの会社はこういう状況だ」「それならこういう選択肢がある」「では、最終的にどの製品が合うのか」と絞り込んでいくようになると思います。
今はまだSEOが強いサイトが優先的に出る面もありますが、Googleが目指しているのはそれだけではないと思います。専門性があり、ニッチな分野で強みを持っている情報を、それを必要としている人に届ける方向に進むはずです。

ニッチな情報でも、それを求めている人にしっかり届けられるようになるということですね。

古畑社長 そうです。そう考えると、うちにとってはチャンスだと思っています。専門性はありますし、うんちくのような深い話はいくらでもできます。それを発信し続けることで、これまでのように検索ボリュームの大きさだけが重要だったマーケティングから変わっていけるのではないかと思っています。
だからこそ、情報発信をすべきだと思っています。言いたいことはどんどん発信した方がいい。

AI時代はニッチ市場にこそチャンスがある

市場自体の認知が低く・小さいという課題感を持っていました。今はその見方に変化はありますか。

古畑社長 まだ根本は同じです。ただ、その解決方法の一つがAIになるのではないかというイメージがだんだんできてきました。以前は、Webマーケティングだけでは限界があると感じていました。ではその解決策がテレビCMなのかと言われると、それも今の時代には遅すぎる。一般認知をどう作るのかが分からなかったのです。
しかし、この1〜2年で時代が大きく変わり、AIがそのあたりを解決してくれるのではないかと思うようになりました。

ユーザーだけではなく、AIをターゲティングするという視点

古畑社長 これからは、AIをターゲティングできるかどうかが大きな差になるのではないでしょうか。AIからどう見られるか、AIにどう取り上げてもらうかを考えられるかどうかです。
今後のマーケティング活動においては、エンドユーザーをどうターゲティングして見つけるかという考え方に加えて、AIをターゲティングするという視点が必要だと考えています。AIがきちんと取り上げてくれるような施策や方法論を考えられることが重要になると思います。
少し前までは、マーケターは技術職だと思っていました。Googleが変化し続ける中で、最新のテクニカルな知識を理解し、設定や分析を行う必要があったからです。たとえば、GA4でわかるデータにどう対応するか、どう分析すればよいかというのは、技術者的なアプローチでした。しかし、それが180度変わるのではないかと思っています。

そうした中、マーケティング担当者に求めることはありますか?

古畑社長 今までとこれからでは、求めるものがまったく違うと思っています。Google対策のような話だけではなく、自社の考え方を文章や動画等にアウトプットできる人・作れる人が必要だと思っています。AIに見せるためにも、きちんと情報発信できる人が大事です。AIを使いこなす技術そのものよりも、ちゃんと情報を発信することが大事だと思っています。正しく発信された情報は、あとはAIが読み込んでくれると期待しています。

編集後記

今回のインタビューでは、「業界ではなく、その業務を行う人の課題を見る」という考え方が非常に印象的でした。業界軸ではなく、現場の業務課題を起点にターゲットを捉える姿勢は、当社でもBtoB企業様に向けておすすめしているカテゴリーマーケティングにも通じる考え方だと感じます。

また、「競合を見るより、自社の違いを定義できているかの方が重要」という言葉からは、競合比較ではなく、自社ならではの価値を言語化し、伝え続けることの重要性を改めて考えさせられました。
さらに、AIの進化によって、「AI時代はニッチ市場にこそチャンスがある」という視点や、「AIをターゲティングするという発想が必要になる」という考え方は、共感する点が多くありました。

マーケティングの手法は変わっても、本質は「誰の、どのような課題を解決するのか」を深く理解し、その価値を発信し続けること。本インタビューが、自社のマーケティング戦略や情報発信のあり方を見つめ直すきっかけになれば幸いです。

事例企業紹介

社名
株式会社アセットメント
事業内容
クラウドサービスの開発、販売促進、サポート
クラウドサービス導入時の支援業務
クラウドサービスに関連するバーコードリーダーやRFIDなどの物品販売
ウェブサイト
https://www.assetment.net/

本事例で活用されたサービス