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サービスの提供と共に普及啓発を。
──未成熟市場のBtoBマーケティング

2026年09月24日

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本記事をご覧いただいている方の中にも、まだ市場が十分に形成されていない分野で、マーケティングに取り組まれている方は多いのではないでしょうか。
株式会社エネットが提供するEVスマート充電サービス「EnneEV(エネーブ)」も、「EVはまだ高い」「充電スポットが少ない」といった誤解や認知不足が依然として残っている市場でビジネスを展開しています。そうした中、EnneEVでは、単にサービスを認知させ販売するだけではなく、普及啓発活動といった市場そのものを育てることを目的にマーケティング活動に取り組んできました。
今回は、EnneEVの立ち上げ時からマーケティングを推進されている遠藤様に、取り組みを始めた背景や苦労、成果、そしてAI時代の情報発信についてお話を伺いました。

マーケティング活動を"継続できる体制"が重要だった。

当社が関与させていただく前は、どのようなマーケティング活動をされていたのでしょうか。

遠藤様 当初はほとんど行っていませんでした。会社のホームページにはサービス紹介ページがありましたが、内容はパンフレットに近い事実情報の発信でした。
その後少しでも多くのお客様にEVそのものの魅力や充電に関する知識を深めていただきながらサービスの魅力を知ってもらうために、サービス紹介動画や、コスト削減メリットを伝えるための料金シミュレーターを作ったりしてコンテンツを拡充していったのが、マーケティング活動の始まりです。

外部委託を検討された背景を教えて下さい。

遠藤様 継続性を持って情報を発信できる体制を作りたいと考えたのがその理由です。
私はマーケティングの専任担当者ではありません。当時は、サービス立ち上げ時期だったこともあり、営業戦略やアライアンス先の開拓、システム開発・運用まで事業開発に関わるすべての業務を担当していました。
その片手間で広報活動やマーケティングに取り組んでいました。
通常業務が忙しくなると、マーケティング活動に時間を割けなくなり、Webサイトの更新も止まってしまう状況でした。その状態は、やはり良くないと感じていました。

新しい市場では、サービスを売る前に"市場を育てる"マーケティングが欠かせない。

早い段階からマーケティングの必要性を感じていらっしゃったように思います。

遠藤様 当初、EVは世界的な潮流もあり、すぐに世の中に広がっていくだろうという見込みがありました。現時点では、想定していたほど普及はしていませんが、地球環境や新たなビジネスチャンスのためにも普及を推進していきたいと考えています。
EVが普及するためには、車両コストの低減もさることながら、電気代などの運用コストも下げることで導入のハードルを下げる必要があります。特に、多くの車両を使用している法人の場合は導入・運用コストも大きくなります。
我々は電力会社として電気代をはじめとした運用コストに着目し、充電制御によりコストを抑えながらEVを普及させたいと考え生まれたのがEnneEVです。ただ、当時はこの技術は認知・理解されていなかったため、マーケティングと共に啓発活動も必要だと考えていました。

マーケティング活動の目的をどのように捉えていますか。

遠藤様 最終目的は事業成長につなげていくことですが、そのためには普及啓発が大切だと感じています。
私たちの事業が成長するためにはEVの普及が欠かせません。しかし、現在でも「EVは長距離を走れない」「充電スポットが少ない」などの誤解が多くあり、EV普及に向けての壁がいくつもあります。
また、我々はEV購入後の行動の変化、すなわち自社充電による効率化・低コスト化をお勧めしていますが、「EVを買ったら、街中にある充電スタンドへ行けば良いのでしょう」と、従来のガソリン車の運用のままで考えている方も多いのが実情です。

そのため、多くの方にEVに対する誤解を解いてもらい、私たちの商材についても正しく理解してもらう必要があります。遠回りではありますが、単にサービスを販売するためのマーケティングではなく、普及活動が必要だと考えています。


遠藤様 しかし、私たちはEVを作っている立場でも、販売している立場でもありません。
EVを利用しようとする企業を見つけ、充電器を設置し、充電を制御することでコストを抑えるという価値を提供している立場です。
マーケティング活動の取り組みに時間がかかった理由の一つとして、当初は「なぜ私たちが、そこまで普及活動をしなければならないのか」と周囲から言われたこともあります。
そうした理解を得るためにも時間がかかりました。

お客様に選ばれる土台づくりを重視する。

マーケティング活動で実現したかったことが、どの程度達成できていると感じていますか。

遠藤様 最終的な目標は、Webサイトを通じて受注につながることです。その点においては、現時点では「十分に実現できている」とまでは言えません。
一方で、マーケティングサイトのアクセス数が増加し、継続的にユーザーが集まるチャネルを作ることができたのは大きな成果だと思っています。エネットという会社自体の知名度はある程度ありましたが、EnneEVというブランドについてはゼロからのスタートでしたので。

マーケティング活動で実現したかったことが、どの程度達成できていると感じていますか。

マーケティング活動を考える上で大切にしていることは何ですか?

遠藤様 お客様に「欲しい」と思っていただく環境を作ることですね。
「この仕組みは必要だ」「エネットに相談すればアドバイスしてもらえる」そう思っていただける存在になることが重要だと考えています。
先ほどもお話ししたように、EVはまだ新しい市場ですし、「EVは高い」「充電が面倒」「導入はまだ早い」といった固定観念を持っている方が多くいらっしゃいます。そうした認識が変わらなければ、市場は広がりません。そのため、製品の説明だけではなく、「なぜ今EVなのか」「なぜこの仕組みが必要なのか」という考え方も含めてお伝えしていく必要があると思っています。

現在難しいと感じることは何ですか?

遠藤様 「お客様の意思決定プロセスを把握し、どうすれば前へ進められるのか」ですね。
BtoBの場合、情報を収集する方と、実際に意思決定する方が違うケースが多いのですが、情報収集を担当している方には「これは良い仕組みですね」と理解していただけます。
ただ、上層部へ話を上げたときに、「まだ当社には必要ないのではないか」と判断されることもあります。

現在は、経営層やキーマンに対する直接アプローチを複数のチャネルや施策を通じて試しています。ただ、どの施策がどのような方に響くのかは、まだ十分に見えていない部分があります。

市場を広げるためには、自社だけでなく他の企業と一緒に取り組むことも必要

注力していきたいことや、新たに取り組んでいきたいことがあれば教えてください。

遠藤様 正直なところ、何が正解なのかはまだ分かりません。
だからこそ、これからもトライアンドエラーを繰り返しながら取り組んでいくしかないと思っています。

その一方で、私たちだけがマーケティングを行えば良いという話でもありません。EVには、車をつくるメーカー、販売会社、リース会社、保険会社、充電器メーカー、工事会社など、多くの関係者がいます。そうしたサプライチェーン全体に関わる企業と一緒に取り組んでいく必要があると考えています。

これまでは、自社サイトを中心にコンテンツを発信してきました。もちろん今後も継続しますが、それだけでは限界があります。そのため、自社サイト以外でもEVについて正しく理解していただくための情報発信が必要だと考えています。例えば、YouTubeのような動画コンテンツや、展示会でのセミナーなども、その一つです。
さまざまなチャネルを活用しながら、EVの正しい知識を広めていくことが重要だと思っています。

注力していきたいことや、新たに取り組んでいきたいことがあれば教えてください。

AI時代はメリットだけを強調するのではなく、正しい情報をきちんと伝えることが重要

AI検索やAIエージェントなども普及していますが、その点についてはどのようにお考えですか。

遠藤様 短期的には、オーガニック検索からの流入が減る可能性もありますので、その点は脅威ですね。一方で、AIが正しい情報を学習し、適切に回答してくれるようになれば、長期的にはプラスになると思っています。

そのためには、AIに正しい情報を学習してもらうことも重要になってくると思います。実際にある会社のEV研修用に作成したテスト問題をAIに回答をさせてみましたが、100%正しい回答が返ってきたわけではありませんでした。
AIが学習している情報自体が、公開されている情報を元にしている以上、その元となる情報に誤りや誤解が多ければ、AIも正しい回答を返せなくなってしまいます。

だからこそ、メリットだけを強調するのではなく、正しい情報をきちんと発信していくことが重要だと思っています。

編集後記

今回のインタビューを通して印象的だったのは、「サービスを売る」のではなく、「市場を育てる」というマーケティングの考え方でした。
新しい市場では、どれほど優れたサービスであっても、その価値や必要性が理解されていなければ選ばれることはありません。そのためには、自社の商品やサービスを訴求するだけでなく、市場にある誤解を解き、正しい知識を広めていく活動もマーケティングの重要な役割になります。

また、「継続できる体制づくり」「社内の理解を得ることの大切さ」「意思決定者へのアプローチ」「AI時代における正しい一次情報の発信」など、未成熟市場に限らず、多くのBtoB企業にも共通する示唆が数多くありました。今回のインタビューが、新しい市場づくりやBtoBマーケティングに取り組む皆様にとって、次の一歩を考えるヒントになれば幸いです。

事例企業紹介

社名
株式会社エネット
事業内容
小売電気事業
省エネルギーに関するコンサルティング
ウェブサイト
https://www.nttev.com/

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