ABMは自社に必要?向いている企業・向いていない企業の判断ポイント
「ABMは本当に自社に向いているのか」
「どの企業をターゲットにすればよいのか」
と迷っている方も多いのではないでしょうか。
ABMは、自社にとって重要な企業を選定し、その企業に営業・マーケティングのリソースを集中させる手法です。ただし、ターゲット企業を絞れば成果が出るわけではありません。
企業ごとの課題や意思決定プロセスを分析し、個別にアプローチする必要があるため、一定の工数やリソースが必要です。
そのため、「大手企業を開拓したい」といった理由だけでABMを始めるのではなく、自社の顧客構造や受注単価、ターゲット企業、営業・マーケティング体制などから、ABMとの相性を判断することが重要です。
本記事では、ABMに向いている企業・向いていない企業の特徴と、自社でABMに取り組むべきかを判断する4つのポイントを解説します。
1.ABMとは?
ABM(Account Based Marketing:アカウントベースドマーケティング)とは、自社にとって重要な企業(アカウント)を選定し、その企業に対して営業とマーケティングが連携してアプローチする手法です。
不特定多数の見込み顧客を広く集めるのではなく、「どの企業から受注したいのか」を明確にし、限られた営業・マーケティングのリソースを重点的に投入する点が特徴です。
ABMは「企業リストを作って営業すること」ではない
ABMというと、「ターゲット企業をリストアップして営業をかける手法」と捉えられることがあります。
しかし、企業名をリストアップするだけではABMとはいえません。
ターゲット企業について、たとえば次のような情報を整理します。
・どのような事業課題を抱えているのか
・どの部署・役職が意思決定に関わるのか
・どのような情報を届ければ関心を持ってもらえるのか
・広告・コンテンツ・営業など、どの接点を活用するのか
そのうえで、企業ごとに課題を仮説化し、適切な接点とアプローチ方法を設計していくことがABMの基本です。ABMの基本的な進め方や具体的な施策については、以下記事で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
関連記事:ABM戦略の進め方と具体的なABM施策をご紹介
2.ABMが向いている企業とは?
ABMは、すべてのBtoB企業に適した手法ではありません。
特にABMに向いているのは、「狙うべき企業が明確で、1社を獲得する価値が高く、企業ごとの個別アプローチが必要な企業」です。
自社がABMに向いているかどうかは、主に次の4つの条件から判断できます。
狙いたい企業が明確になっている
まず重要なのが、アプローチすべき企業を具体的に絞り込めることです。
たとえば、
・特定業界の大手企業
・従業員5,000名以上の企業
・特定のシステムを利用している企業
・既存顧客と似た特徴を持つ企業
など、一定の条件からターゲットを企業名まで具体化できる状態が理想です。
ABMでは、1社ごとに調査やアプローチを行います。
そのため、「とりあえず大手企業を狙う」「エンタープライズ企業を開拓する」といった曖昧な設定では、対象企業が広がりすぎてしまいます。
すでに営業部門で攻略したい企業が共有されている場合や、受注実績などから狙うべき企業像が見えている場合は、ABMを検討しやすい状態といえるでしょう。
1社あたりの受注額・LTVが高い
ABMは、通常のマーケティング施策よりも1社にかける工数が大きくなりやすい手法です。
ターゲット企業について調査し、課題を仮説化したうえで、コンテンツやメッセージを設計し、営業担当者と連携しながら複数の接点をつくる必要があるためです。
そのため、「1社を獲得するために一定のコストをかけても、十分なリターンが見込めるか」が重要な判断基準になります。
たとえば、低単価の商品を多数の企業に販売するビジネスよりも、1件あたり数百万円~数千万円規模の受注や、その後の継続取引が期待できるビジネスの方が、ABMに投じたコストを回収しやすくなります。
企業ごとに個別のアプローチが必要
ターゲット企業によって、
・抱えている課題
・組織構造
・意思決定者
・導入の判断基準
・提案すべき内容
が大きく異なる場合も、ABMとの相性がよいといえます。
特に大手企業では、一つのサービスを導入する場合でも、現場部門、情報システム部門、購買部門、経営層など複数の関係者が関与することがあります。
その場合、すべての企業に同じメッセージを届けるよりも、企業ごとの状況を踏まえてアプローチを変える方が効果的です。
反対に、多くの企業が同じ課題を抱えており、ほぼ同じメッセージでアプローチできるのであれば、必ずしも1社ずつABMを行う必要はありません。
営業・マーケティングの体制がある
ABMは、マーケティング部門だけで完結する施策ではありません。
マーケティング部門が広告やコンテンツによってターゲット企業との接点をつくっても、その後の営業活動につながらなければ受注には結び付きません。
そのため、
・ターゲット企業を営業とマーケティングで共有する
・企業ごとの状況や課題を共有する
・マーケティング施策への反応を営業へ引き継ぐ
・営業結果をマーケティングへフィードバックする
といった連携が必要です。
ABMを検討するときは、「ターゲット企業をリストアップできるか」だけではなく、営業とマーケティングが一緒にその企業を攻略できる体制があるかも確認しましょう。
3.ABMが向いていないケース
一方、ABMを導入しても、かけた工数に対して十分な成果を得にくいケースがあります。
特に次のような状態であれば、ABMを始める前に、ターゲット戦略そのものを整理した方がよいでしょう。
ターゲット企業がまだ定まっていない
「大手企業と取引したい」「エンタープライズ市場を開拓したい」と考えていても、具体的にどの企業を狙うべきなのかが分からなければ、ABMのターゲットを適切に設定できません。
また、「取引したい企業」を並べるだけでは、その企業に自社の商品・サービスへのニーズがあるとは限りません。
この場合は、いきなりABMを始めるのではなく、まず既存顧客や過去の受注実績を分析し、「自社はどのような企業に選ばれているのか」「どのような企業なら価値を提供しやすいのか」を整理することから始めます。
多くの企業に共通する課題がある
ターゲット企業ごとに課題が異なる場合は、個別アプローチを行うABMが適しています。
一方、数百社・数千社に共通する課題があるのであれば、すべての企業を1社ずつ攻略する必要はないかもしれません。
たとえば、
・複数拠点の管理に課題を抱えている企業
・急激な人員増加によって業務負荷が高まっている企業
・サブスクリプションサービスを展開している企業
など、共通する課題や状況から企業群をまとめられるケースです。
この場合は、1社ずつ個別施策を設計するよりも、共通する課題を持った企業群を一つのターゲットとして捉え、コンテンツや広告、営業施策を展開した方が効率的な場合があります。
個社対応に十分なリソースを割けない
ABMのデメリットの一つが、企業ごとの対応に一定の工数が必要になることです。
100社を対象にする場合でも、それぞれについて
企業調査 → 課題仮説 → 接点設計 → アプローチ → 営業フォロー
を行えば、相応のリソースが必要になります。
ターゲット企業数が増えれば、すべての企業に同じ密度でアプローチすることは難しくなります。
そのため、ABMを導入する前に、「何社を対象にして、一社あたりどの程度の工数をかけられるのか」を考えておくことが重要です。
4.「狙いたい企業」ではなく「勝てる企業」を探す
ABMのターゲット選定で重要なのは、「自社が取引したい企業」と「自社が受注しやすい企業」は必ずしも同じではないという点です。
ABMでは「どの企業と取引したいか」だけでなく、「自社が価値を提供しやすく、受注につながりやすい企業はどこか」という視点からターゲットを選定することが重要です。
既存顧客から受注しやすい企業の特徴を探す
ABMのターゲットを考える際には、まず既存顧客を分析する方法があります。
たとえば、
| 確認する項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 業界 | 特定業界で受注率が高くないか |
| 企業規模 | 従業員数・売上規模に共通点がないか |
| 課題 | 導入前にどのような課題を抱えていたか |
| 導入理由 | なぜ競合ではなく自社を選んだのか |
| 受注額 | 高単価になりやすい企業に特徴はないか |
| LTV | 継続利用しやすい企業に共通点はないか |
こうした実績から共通点を探すことで、「自社が狙いたい企業」ではなく、「自社が価値を提供しやすく、受注につながりやすい企業」を見つけやすくなります。
業界・企業規模だけでなく「課題・ニーズ」まで見る
ABMのターゲットを選定する際は、「製造業」「従業員1,000名以上」といった企業属性だけで判断しないことも重要です。
同じ業界・企業規模であっても、企業によって抱えている課題やニーズは異なります。
そのため、企業属性+どのような課題が発生しているか+なぜその課題を解決する必要があるのかまで整理します。
「どんな企業か」だけではなく、「なぜその企業が自社の商品・サービスを必要とするのか」まで考えることで、ABMのターゲット精度を高めやすくなります。
5.ABMが合わない場合はどうする?
ABMが向いていないからといって、ターゲットを絞らず、不特定多数の企業にマーケティングを行えばよいわけではありません。
ABMほど1社単位で個別化する必要がない場合は、複数企業に共通する課題や特徴からターゲット市場を定める方法もあります。
企業ではなく「顧客カテゴリー」を狙う
その一つが、カテゴリーマーケティングです。
カテゴリーマーケティングでは、特定の企業を1社ずつ指定するのではなく、自社が価値を提供しやすい企業群を「顧客カテゴリー」として捉えます。
たとえば、
ABM:「A社・B社・C社を攻略する」
という企業単位の考え方に対し、
カテゴリーマーケティング:「○○という課題を抱えている企業群を攻略する」
という形で市場を捉えます。
企業群に共通する課題を起点にすることで、1社ごとにすべての施策を作り分けるのではなく、共通するコンテンツや広告、営業メッセージを設計しやすくなります。
関連記事:カテゴリーマーケティングとは?「広くアプローチする」から、「儲かる顧客に集中」へ。
ABMとカテゴリーマーケティングは併用できる
ABMとカテゴリーマーケティングは、必ずしもどちらか一方を選択するものではありません。
たとえば、
① 自社が勝ちやすい顧客カテゴリーを特定する
↓
② そのカテゴリーに属する企業を抽出する
↓
③ 特に重要な企業をABMで個別に攻略する
という組み合わせも考えられます。
つまり、カテゴリーマーケティングで「どの市場を狙うか」を決め、ABMで「その中のどの企業を攻略するか」を具体化するという考え方です。
関連記事:ABMとカテゴリーマーケティングの違い──「誰でも」ではなく「儲かる顧客」に集中するBtoBマーケティング
6.自社にABMが必要か判断する4つのチェックポイント
最後に、自社がABMに向いているかを確認してみましょう。
ABMを検討する際の4つのチェックポイント
| チェック項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| □ターゲット企業が明確か | 攻略したい企業を具体的にリストアップできるか |
| □1社あたりの受注価値が高いか | 個別アプローチにかかるコストを回収できるか |
| □個別アプローチが必要か | 企業によって課題・関係者・提案内容が異なるか |
| □実行できる体制があるか | 営業・マーケティングが連携して企業を攻略できるか |
この4つに当てはまるほど、ABMを検討しやすい状態といえます。一方、
・ターゲット企業がまだ明確になっていない
・共通する課題を持つ企業が多数存在する
・1社ごとの攻略に十分なリソースを割けない
という場合は、すぐにABMを始めるのではなく、まず「自社はどの企業・市場であれば価値を提供しやすいのか」を整理することが先です。
重要なのは、ABMを導入すること自体を目的にしないことです。
「誰に価値を提供するのか」を決め、そのターゲットを攻略する方法としてABMが適しているかを判断する。
この順番で考えることが、ABMを検討するうえで重要です。
自社が「勝てる顧客」を明確にし、ABM・カテゴリーマーケティングを設計する
「狙いたい業界はあるものの、本当に自社が勝てる市場なのか判断できない」
「ターゲットは決まっているが、具体的な攻略方法まで設計できていない」
といった企業も少なくありません。
ターゲットメディアの「ABM・カテゴリーマーケティング立上げ支援」では、過去の受注実績や顧客のニーズなどを分析し、自社が受注しやすく、継続・取引拡大が期待できる顧客カテゴリーやターゲット企業の選定から支援します。
さらに、ターゲットを決めるだけではなく、攻略シナリオや施策、KPIの設計、コンテンツ・アプローチ施策の準備、実行後の効果分析・改善まで一貫してサポートしています。
「どの市場・企業を狙うべきか」から整理してABMを立ち上げたい方や、自社が勝ちやすい顧客カテゴリーを見つけて新規顧客開拓を強化したい方は、ぜひご相談ください。
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本コラムの作成・編集者
ターゲットメディア株式会社 BtoBマーケティング研究チーム
私たちは、「日本のBtoBマーケティングをアップデートする」をミッションに活動する専門家チームです。
BtoB領域に特化して、17年以上・支援社数200社以上のマーケティング支援を手掛け、そこで蓄積された成功事例や実践的なノウハウを、現場で奮闘するマーケターの皆様にお届けしています。
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