ABM施策のKPIとは?評価基準の設定方法と目標計画の作り方を解説
ABM施策は一般的なリード獲得施策とは異なり、ターゲット企業との接点創出や関係性強化が重要となるため、従来のCV数やCPAだけでは成果を正しく評価できないケースがあります。そのため、成果につながるKPIを設計し、各施策と連動した目標計画を立てることが重要です。
本記事では、ABM施策におけるKPIの考え方から、成果につながる評価基準の設定方法、具体的な目標計画の作り方、成功企業に共通する運用ポイントまで分かりやすく解説します。
なお、ABM戦略の全体像については、以下の記事を参考にしてください。
▶ABM戦略の進め方と具体的なABM施策をご紹介
1.ABM施策のKPIとは?まず理解したい考え方
リード獲得数中心のKPIではABMを正しく評価できない
BtoBマーケティングでは、CV数やMQL数など「獲得数」を重視するケースが一般的です。しかしABMでは、単純なリード数だけでは成果を判断できません。対象となるのは特定の企業群であり、「何件獲得したか」よりも「狙った企業との関係がどこまで進展したか」が重要になるためです。
例えば、
・ターゲット企業からリードを獲得できたか
・キーマンと接点を持てたか
・商談や案件化につながったか
といった指標の方が、ABMの成果を正しく評価できます。

ABMは「量」ではなく「ターゲット企業との関係性」を評価する施策
ABMの目的は、受注確度の高い企業に対して、営業とマーケティングが連携しながら最適なアプローチを行い、商談・受注につなげることです。
そのため、ABMのKPI設計では次のような観点が重要です。
・ターゲット企業にリーチできているか
・ターゲット企業のリードを獲得できているか
・ターゲット企業の面談機会を作れているか
・上位役職層と接点を持てているか・キーマンに到達できているか
・具体的な提案ができているか
このように、ABM施策では「母数の多さ」ではなく、ターゲット企業と接点を軸に数と質と進捗度合いを評価することが基本です。
ABMの目標設定や目標設計を考える際も、この前提を押さえておく必要があります。
ABM施策における一般的なKPIとは
ABM施策におけるKPIは、目的やフェーズによって分けると理解しやすくなります。
<接点創りを重視するフェーズ>
・ターゲット企業への到達数
・ターゲット企業のサイト訪問数
・ターゲット企業からのリード数
・ターゲット企業との面談数(状況把握できた数)
・ターゲット企業のキーマン把握
<提案~案件化を重視するフェーズ>
・ターゲット企業との接触数と状況
・提案化数・提案化率
・受注数・受注率
2.ABM施策におけるKPI|フェーズ別に見る評価指標一覧

①アプローチ段階のKPI
ABMの最初のフェーズは、狙うべきターゲット企業に適切に到達できているかを確認する段階です。
代表電話への架電だけでは、目的部署につながらない、担当者不在で終わる、情報が蓄積されないといった課題が起きやすくなります。
そのため、ABMではターゲット部署の直通番号や担当者情報、接点の有無といった到達の質を測る指標が重要です。
この段階で重要なのは、単に架電件数を増やすことではなく、狙った企業・狙った部署・狙った役職者に届いているかを見極めることです。
②リード収集段階のKPI
ターゲット企業への到達に成功した後は、ターゲット企業内の情報をどれだけ蓄積できているかが重要になります。
ABMでは、1社の中に複数の関係者が存在します。導入部門、情報システム部門、購買部門、決裁者など、複数の利害関係者を把握しないと案件は進みません。
そのため、単なるリード数ではなく、ターゲット企業内のキーマンがどれだけ含まれているかまで見る必要があります。
ABMの設計においては、「1社1リード」で満足しないことが重要です。
複数の意思決定関係者に接点を持つことで、受注確度は大きく変わります。
③営業連携・商談段階のKPI
ABMはマーケティング単独で完結する施策ではありません。営業とマーケティングが連携し、接点を商談や案件へと進めることが重要です。
このフェーズでは、取得したリードを営業活動につなげられているか、そして案件化に進んでいるかを確認します。
ここで特に重要なのは、マーケ起点の接点が営業成果につながっているかを可視化することです。
もしリード数は増えているのにヒアリング成功率が低いなら、ターゲット選定や訴求内容、接触タイミングの見直しが必要です。
④受注・事業成果段階のKPI
最終フェーズでは、ABM施策が事業成果にどれだけ寄与したかを評価します。
ABMの目的は、重要顧客への継続的な売上創出です。したがって、単に受注件数を見るだけでなく、利益性や継続性も含めて判断することが重要です。
例えば、受注件数が少なくても高単価かつ継続率の高い案件が獲得できていれば、ABM施策としては十分に成功といえます。
この点が、一般的なリード獲得施策との大きな違いです。
3.ABM施策の目標計画の作り方【5ステップ】
STEP1|対象ターゲット企業と優先順位を決める
ABMの目標計画は、どの企業を狙うかを決めない限り始まりません。
まずは、自社にとって価値の高いターゲット企業を定義し、優先順位をつけることが必要です。
判断基準としては以下が挙げられます。
・市場規模
・受注可能性
・継続取引の見込み
・自社との相性
・競合状況
・営業リソースとの整合性
この段階が曖昧だと、ABMの目的そのものがぶれ、KPI設計も機能しなくなります。
ABM戦略の成否は、最初のターゲット設計で大きく決まります。
ABM施策の全体設計についてはこちらの記事を参考になさってください。
▶ ABM戦略の進め方と具体的なABM施策をご紹介
STEP2|最終成果(KGI)を設定する
次に、ABMで何を最終成果とするかを明確にします。
ここでいうKGIは、事業成果に直結する指標です。
例えば、以下のように設定できます。
・重点ターゲット企業から年間10社受注
・ターゲット企業群から年間受注金額1億円
・上位50ターゲット企業からの商談創出30件
・重点ターゲット企業売上比率を20%向上
このとき重要なのは、「現場が追える数字」ではなく「事業として達成すべき成果」から置くことです。ABMの目標設定を行う際、先に中間指標から決めてしまうと、最終成果とつながらない指標管理になりやすくなります。
STEP3|KGIから逆算してKPIを設計する
例えば、「重点ターゲット企業から年間10件受注」を目標に設定した場合を考えてみましょう。過去実績から各フェーズの転換率をもとに逆算すると、必要な活動量が見えてきます。
・受注率20% → 案件50件
・案件化率50% → 面談100件
・面談化率25% → ヒアリング400件
・ヒアリング成功率40% → 接触1,000件
このように分解することで、現実的なKPIを設定できます。また、目標未達時にどの工程がボトルネックになっているのかも把握しやすくなります。
STEP4|部門横断で責任指標を分担する
ABMはマーケティング部門だけでも、営業部門だけでも成果を出しにくい施策です。
そのため、KPIは部門横断で責任範囲を整理しておく必要があります。
例えば以下のような分担が考えられます。
・マーケティング:ターゲット企業選定、認知形成、接点創出、インテント把握
・インサイドセールス:ヒアリング、キーマン特定、面談化
・フィールドセールス:提案、案件化、受注
・マネジメント:KGI進捗管理、営業・マーケ連携の調整
このように設計することで、「マーケはリードを渡した」「営業が追っていない」といった分断を防ぎやすくなります。
STEP5|定例で見直す運用ルールを決める
KPIは設定することよりも、継続的に見直すことが重要です。
市場環境やターゲット企業の状況は常に変化するため、運用ルールをあらかじめ決めておきましょう。
例えば、
・週次:先行指標の確認
・月次:案件化率・受注率の確認
・四半期:ターゲット企業の見直し
・半期:KPI設計そのものの再評価
といったサイクルで振り返りを行うことで、施策の精度を高められます。
4.ABM成功企業に共通するKPI運用のポイント
マーケティングと営業で共通指標を持つ
ABMで成果を出している企業は、営業とマーケティングが別々の指標を追っていません。共通のターゲット企業と共通KPIを持ち、同じゴールに向かって動いています。
例えば、マーケはリード数、営業は受注数だけを見るのではなく、両者で以下を共有します。
・重点ターゲット企業到達率
・キーマン接点数
・面談化率
・案件化率
・受注率
このような共通言語があると、施策改善が速くなります。
短期成果だけで判断しない
ABMは短期で大量の成果を出す施策ではありません。
とくに大手企業を対象にする場合、受注まで数カ月から1年以上かかることもあります。そのため、短期的な受注件数だけで評価すると、正しく施策判断ができません。
重要なのは、先行指標の改善を見ながら、中長期で成果を育てる視点です。
インテントデータや行動データを活用する
ABMの精度を高めるには、顧客の興味関心や検討兆候を把握することが有効です。
例えば、以下のようなデータは有力な判断材料になります。
・特定ページの閲覧履歴
・資料ダウンロード履歴
・メール開封・クリック履歴
・セミナー参加履歴
・問い合わせ前の再訪頻度
こうした行動データを使うことで、優先的に接触すべきターゲット企業やアプローチのタイミングが見えやすくなります。
ABM戦略においては、感覚ではなくデータに基づいた判断が成果を左右します。
5. ABM施策の成功事例|KPI設計で成果を出した企業の考え方
成功事例1:営業接続率ではなく「ヒアリング成功率」を重視したシステム開発会社
あるシステム開発会社のインサイドセールスチームでは、商談化数を達成するために架電件数と担当接続率を重要指標として活動していましたが、商談化数が伸びない状況が続いていました。
そこで、「担当者と話せた件数」ではなく、「課題ヒアリングができた件数・率」に変更。さらに、ターゲット部署の直通番号取得やキーマンの実名把握を重視する運用に切り替えたことで、商談化率が向上しました。
このケースでは、ABMの目的に沿って「到達の質を評価する指標」へ見直したことが成功要因です。
成功事例2:「坪単価」を最重要KPIにしたオフィスデザイン会社のABM
あるオフィスデザイン会社では、受注件数だけでは事業成長の成果を正しく測れないという課題がありました。案件によって規模や収益性が大きく異なるためです。
そこで同社は、坪単価を重要KPIとして設定し、ターゲット企業の案件化率や提案化率を組み合わせて評価することで、収益性の高い案件への集中が進みました。
この事例は、ABMの目標設計において、業種ごとの収益構造に合ったKPIを置くことの重要性を示しています。
6. ABM施策のKPI設計でよくある失敗

指標を増やしすぎる
ABMでは見たい数値が多くなりがちですが、指標を増やしすぎると現場が運用できません。
確認するだけで時間がかかり、結局どこを改善すべきか分からなくなります。
対策としては、以下のように絞ることが有効です。
◇フェーズごとに最重要KPIを1〜3個に限定する
・経営向け、営業向け、マーケ向けで見る指標を分ける
・改善アクションに直結する指標を優先する
営業KPIと分断されている(受注まで追えず途中指標だけで終わる)
もう一つ多いのが、マーケティング側のKPIが途中指標だけで止まってしまうケースです。例えば、サイト訪問数や資料請求数は増えていても、その後の商談・受注につながっていなければ、ABMとしては十分とはいえません。
ABMでは、最終的に受注やLTVまで見据えて、営業KPIと一貫した設計を行う必要があります。
この一貫性がないと、活動量は増えているのに成果が出ない状態に陥ります。
7. まとめ|ABM成功の鍵は「KPI設計と評価基準の一貫性」
ABMでは、CV数やリード数だけでは成果を正しく評価できません。
重要なのは、ターゲット企業との接点状況、キーマンへの到達度、商談化・案件化の進捗、そして最終的な受注成果までを一貫して管理することです。
KPIを設計する際は、
・重点ターゲット企業を決める
・KGIを設定する
・逆算してKPIを設計する
・営業とマーケで共通指標を持つ
・定期的に見直す
という流れで考えると整理しやすくなります。
ABMの成果は、施策の数ではなく「狙った企業との関係をどれだけ前進させられたか」で決まります。
下記の資料では、ABMの導入手順から現場での運用方法までを具体的にまとめた「ABM実践ガイド」について解説しています。自社でABMを本格的に始動させるための「手引書」として、ぜひお手元にご用意ください。
また、ABM戦略の全体像については、以下の記事を参考にしてください。
本コラムの作成・編集者
ターゲットメディア株式会社 BtoBマーケティング研究チーム
私たちは、「日本のBtoBマーケティングをアップデートする」をミッションに活動する専門家チームです。
BtoB領域に特化して、17年以上・支援社数200社以上のマーケティング支援を手掛け、そこで蓄積された成功事例や実践的なノウハウを、現場で奮闘するマーケターの皆様にお届けしています。
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