ABM事例で学ぶ|狙った企業の開拓を成功させるポイント

ABM(Account Based Marketing)は、すべての見込み顧客に一律でアプローチするのではなく、自社にとって重要度の高い企業を選定し、その企業に営業・マーケティング活動を集中させる手法です。

ABMに取り組む企業では、「どの企業を狙うべきか」がまったく決まっていないケースは、実はそれほど多くありません。

営業部門に話を聞くと、既存顧客との親和性や継続可能性、LTVなどを踏まえ、「社員数●,000名以上の大手企業」「特定業界のエンタープライズ企業」など、開拓したい企業をある程度絞り込めているケースもあります。

しかし、ターゲット企業が限られているからこそ、次のような課題が生まれます。

・狙っている企業と、どのように接点を作るのか
・企業内のどの部門・役職者にアプローチするのか
・サービスや課題テーマを、どのように認知してもらうのか
・広告、メール、SNS、レター、インサイドセールスなど、どの施策を優先するのか

つまり、ABMは「ターゲット企業を決めれば終わり」ではありません。

限られた企業群に対して、どのように接点を作り、何を伝え、どの施策で関係を深めていくのかまで設計することが、成果を出すうえで重要です。

本記事では、ABMの成功事例を2つ紹介しながら、ターゲット企業との接点を作る方法や、営業・マーケティングが連携して商談につなげるためのポイントを解説します。
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1.ABMで重要なのはターゲット企業を決めた後の実行設計

本記事で詳しく取り上げるのは、ABMの定義そのものではなく、ターゲット企業を決めた後に、どのようにアプローチしていくかという実行設計です。
ABMの基本的な考え方や全体像について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。


では、ターゲット企業を決めた後、具体的にどのような取り組みを行えばよいのでしょうか。

ここからは2つの成功事例を紹介しながら、狙った企業との接点を作る方法と、営業・マーケティングが連携して商談につなげるポイントを見ていきます。

2.ABMの成功事例2選

ここからは、ABMの成功事例を2つ紹介します。

1つ目は、大手企業にターゲットを絞り、複数のチャネルを組み合わせて接点を増やした事例です。

2つ目は、営業とマーケティングが共通のターゲット企業を設定し、商談につながる企業を優先してアプローチした事例です。

どちらの事例にも共通しているのは、単純なリード数ではなく、ターゲット企業との接点や商談につながる行動を重視していることです。

事例1|大手企業に絞って複数チャネルで接点を創出した例

実施前の課題
大手企業を開拓したいものの、代表電話や問い合わせフォームからでは、なかなか担当部署やキーパーソンにたどり着けないという課題がありました。

また、展示会や一般的な広告施策では、ターゲット外の企業からのリードも多く獲得されていました。その結果、営業部門のフォロー工数が増え、本来注力したい企業へのアプローチに十分な時間をかけられない状況になっていました。

実施した施策
そこで、広告、ホワイトペーパー、ターゲティングLP、SNS、レター、電話など、複数のチャネルを組み合わせてターゲット企業への接点を増やしました。

具体的には、以下のような施策を実施しました。

・ターゲット企業のリストを作成し、業界・企業規模・部門などからアプローチ対象を明確化
・ターゲット企業が関心を持つテーマに合わせて、ホワイトペーパーやターゲティングLPを制作
・広告、メール、営業接触など複数のチャネルを組み合わせ、企業との接点を創出
・キーマンにCXOレターを送付し、その後に電話でフォローすることで、通常の電話営業では接点を作りにくい相手にもアプローチ

広告施策では、企業ターゲティング広告を活用し、EightやIPアドレス連携などを組み合わせて、企業単位での接触を強化しました。一般的な広告配信では、ターゲット外の企業にも広告が届く可能性があります。一方、ABMでは、狙った企業に効率よく接点を作ることが重要です。さらに、LinkedInなどのSNSも活用し、対象企業の担当者へのダイレクトアプローチも実施しました。

成功ポイント
この事例の大きなポイントは、単純なリード数ではなく、「ターゲット企業との接点」をKPIとして設定したことです。

具体的には、以下のような指標を重視しました。

・ターゲット企業からの接触数
・ターゲット企業内の関与者数
・ターゲット企業からのLP閲覧数

ABMでは、幅広くリードを集めることよりも、狙った企業との接点をどれだけ作れたかが重要です。ターゲット外のリードが増えても、営業が注力すべき企業でなければ、商談や受注にはつながりにくいためです。

また、最初からアポイント獲得だけを目指すのではなく、まずはターゲット企業の中で、サービスカテゴリや課題テーマを認知してもらうことを重視しました。

特に大手企業では、1人の担当者だけで導入が決まるとは限りません。

担当部署だけでなく、関連部門や決裁者など、複数の関係者が課題を認識し、サービスへの理解を深めることで、商談や導入検討につながりやすくなります。

つまりABMでは、「すぐに商談化させる」だけでなく、「ターゲット企業内に関心を広げる」ことも重要な成果です。

ABM事例で学ぶ|狙った企業の開拓を成功させるポイント

事例2|営業・マーケティング連携でターゲット企業の商談化率を高めた例

実施前の課題
マーケティング部門が獲得したリードを営業部門がフォローしていたものの、営業の対象外となる企業も多く、商談につながりにくい状況がありました。

マーケティング部門はリード数を増やしている一方で、その中には営業部門にとって優先度の低い企業も多く含まれていました。

その結果、マーケティングが獲得したリードを営業が十分に活用できず、「リード獲得」と「商談創出」が分断されている状態になっていました。

実行した施策
そこで、営業とマーケティングが共通のターゲット企業リストを持ち、その企業群への接点創出をマーケティングが担う体制を整えました。

具体的には、以下のような施策を実施しました。

・営業部門が注力したい企業をリスト化し、マーケティング部門と共有
・ターゲット企業への広告やコンテンツ配信などを行い、接点を創出
・LP閲覧や資料ダウンロードなどの反応があった企業を、営業が優先的にフォロー
・MAツールとSFAを連携し、ターゲット企業のWeb上での行動を可視化
・メルマガの開封やサイト閲覧などをもとに、関心度の高い企業からインサイドセールスがアプローチ

例えば、ターゲット企業の担当者がサービスページを閲覧したり、ホワイトペーパーをダウンロードしたり、メルマガを複数回開封したりしていれば、その企業がサービスに関心を持っている可能性があります。

こうした情報を営業やインサイドセールスがリアルタイムで確認できる環境を整備し、「どの企業に、いつアプローチするべきか」を判断しやすくすることで商談化率を高めることに成功しました。

成功ポイント
この事例の成功ポイントは、営業とマーケティングが共通のターゲット企業リストを持ち、同じ方向を向いて活動したことです。

マーケティング部門がリード数だけを追うのではなく、営業が注力したい企業との接点創出をKPIとして設定することで、リード獲得から商談化までの流れがつながりました。

さらに、MAツールとSFAを連携してターゲット企業のWeb行動を可視化したことで、営業やインサイドセールスも、アプローチの優先順位を判断しやすくなりました。

ABMでは、ターゲット企業のリストを作るだけでは成果につながりません。

重要なのは、「どの企業が、どのような反応をしているのか」を把握し、その情報を営業・マーケティング・インサイドセールスで共有することです。

同じターゲット企業を見ながら、企業の関心度に応じてそれぞれの部門が役割を果たせる状態を作ることで、マーケティング施策を商談・受注につなげやすくなります。

3.ABMの成功事例に共通するポイント

ここまで紹介した2つの事例からも分かるように、ABMで成果を出すには、ターゲット企業を決めるだけでは不十分です。

重要なのは、「誰に」「何を伝え」「どのように接点を作り」「いつ営業がアプローチするか」まで、一連の流れを設計することです。

ここでは、ABMを成功させるために押さえておきたい4つのポイントを整理します。

ターゲット企業ごとに「接点の作り方」を設計する

ABMの出発点は、開拓したい企業を明確にすることです。

ただし、ターゲット企業をリストアップしただけでは商談にはつながりません。

特に大手企業では、代表電話や問い合わせフォームだけでは担当部署やキーマンにたどり着きにくいケースもあります。また、これまで接点のなかった企業に、いきなり商談を打診しても反応を得にくい場合があります。

そのため、ターゲット企業の特性や検討状況に合わせて、広告、コンテンツ、メール、SNS、レター、インサイドセールスなど、適切な接点を組み合わせることが重要です。

ABMでは、「どの企業を狙うか」と同時に「その企業とどう接点を作るか」まで設計する必要があります。

「何を伝えるか」を設計し、課題認識を高める

ターゲット企業との接点を作るだけでは、商談にはつながりません。

特に、まだ課題が顕在化していない企業に対しては、単に自社のサービスを紹介するだけでは「自社には必要ない」と判断されてしまうことがあります。

そこで重要になるのが、ターゲット企業が自社の課題として認識できる情報を届けることです。

たとえば、業界動向や市場の変化、部門が抱える課題、将来的なリスク、他社の取り組み事例などを伝えることで、「自社にも同じ課題があるかもしれない」と気づいてもらうことができます。

ABMでは、接点の「数」だけでなく、その接点で何を伝えるかまで設計することが重要です。

営業・マーケティングでターゲットとKPIを共有する

ABMでは、営業とマーケティングがそれぞれ別の企業を追いかけていては、成果につながりにくくなります。

まずは、営業が開拓したい企業と、マーケティングが接点を作る企業を共通のターゲットリストとして設定することが重要です。

そのうえで、リード数だけではなく、

・ターゲット企業との接点数
・LP・Webサイトの閲覧企業数
・ターゲット企業内の関与者数
・商談化した企業数

など、企業単位で成果を把握できるKPIを設定します。

営業とマーケティングが同じ企業とKPIを見ながら活動することで、「接点を作る→関心を高める→営業がアプローチする→商談につなげる」という流れを一貫して設計できるようになります。

ターゲット企業の「関心の高まり」を捉えて営業につなげる

ABMでは、ターゲット企業がどの程度関心を持っているのかを把握することも重要です。

たとえば、

・サービスページを閲覧している
・ホワイトペーパーをダウンロードしている
・メルマガを複数回開封している
・同じ企業から複数名がコンテンツを閲覧している

といった行動が確認できれば、その企業では課題への関心が高まっている可能性があります。

こうした行動をMAツールやSFAなどで可視化できれば、営業やインサイドセールスは、「どの企業に」「いつ」「どのようなアプローチをするか」を判断しやすくなります。

ABMでは、すべてのターゲット企業に同じタイミングで営業するのではなく、企業の関心度に応じてアプローチのタイミングや方法を変えることが成果につながります。

ABM成功のポイントは「企業単位」でマーケティングと営業をつなぐこと

ABMで重要なのは、ターゲット企業を決めることだけではありません。

ターゲット企業との接点を作り、関心を高め、その反応を営業につなげる。

この一連の流れを、企業単位で設計することがABM成功のポイントです。

「リードを何件獲得したか」ではなく、「狙った企業との関係をどこまで進められたか」という視点に切り替えることで、マーケティング施策を商談・受注につなげやすくなります。

4.ターゲット企業の状態に応じたABM施策の決め方

ABMでは、広告、メール、SNS、レター、インサイドセールス、ホワイトペーパー、セミナーなど、さまざまな施策が考えられます。

しかし、すべての施策を同時に実施することは現実的ではありません。限られたターゲット企業に対して成果を出すためには、対象企業の状態に応じて、優先すべき施策を整理する必要があります。

ABM事例で学ぶ|狙った企業の開拓を成功させるポイント

まずは対象企業の状況を整理する

ABM施策の優先順位を決める前に、まずは対象企業の状況を整理します。

たとえば、以下のような観点で企業を分類します。

・過去に商談したことがある企業
・既存接点はあるが、商談化していない企業
・資料ダウンロードやLP閲覧などの反応がある企業
・接点がまったくない企業
・営業部門が特に注力したい企業
・複数部門にアプローチしたい企業

このように企業の状態を整理することで、どの企業にどの施策を優先すべきかが見えやすくなります。

接点がない企業に対しては、まず認知形成が必要です。一方で、すでに反応がある企業に対しては、営業やインサイドセールスによるフォローを優先すべきです。

①接点がまったくない企業

ターゲット企業との接点がまったくない場合、いきなり商談を打診しても反応を得にくいことがあります。

そのため、まずは認知形成施策を優先します。

具体的には、ターゲット企業に所属するユーザーへの広告配信、業界課題や部門課題をテーマにしたホワイトペーパー、ターゲティングLP、SNSでの情報発信、CXOレターなどが考えられます。

この段階では、サービスを直接売り込むよりも、相手企業が抱えていそうな課題や、今後検討すべきテーマを認識してもらうことが重要です。

たとえば、「なぜ今この課題に向き合うべきなのか」「放置するとどのようなリスクがあるのか」「同じような企業ではどのような取り組みが進んでいるのか」といった情報を届けることで、ターゲット企業内に課題認識を作りやすくなります。

ターゲット企業の認知形成をはかる際、有効なアプローチとなるのが「企業ターゲティング広告(IPターゲティング広告・B2Bターゲティング広告)」です。
こちらも合わせてご確認ください。

②接点はある(リード情報はある)が商談化していない企業

すでに接点はあるものの、商談化していない企業に対しては、課題喚起コンテンツを届けることが有効です。

たとえば、過去に資料をダウンロードしたが商談化していない、セミナーに参加したがその後の反応がない、メールは開封しているが問い合わせには至っていないといった企業が該当します。

このような企業には、単なるサービス紹介ではなく、課題を具体化するコンテンツを届ける必要があります。

たとえば、チェックリスト、課題整理資料、事例資料、比較資料、導入検討ガイドなどが考えられます。相手が「自社にも当てはまる」「このままではまずい」「一度話を聞いてみたい」と感じるきっかけを作ることが重要です。

③反応がある企業(Webサイト閲覧など)

LP閲覧、資料ダウンロード、メルマガ開封、サイト閲覧などの反応がある企業には、営業やインサイドセールスが優先的にフォローします。

重要なのは、単に「資料をダウンロードしたので連絡する」のではなく、相手の行動を踏まえてアプローチすることです。

たとえば、どのページを閲覧しているのか、どのテーマの資料をダウンロードしているのか、複数名が同じテーマに反応しているのかを確認することで、相手の関心に合わせた会話がしやすくなります。

また、営業部門が注力したい企業にフラグを付け、MAツールやSFAで行動を可視化しておくことで、インサイドセールスや営業がフォローすべきタイミングを判断しやすくなります。

ターゲット企業の段階に応じたKPIを設定する

ABMでは、施策の段階に応じてKPIを変えることが重要です。

接点がない企業に対する認知形成段階では、LP閲覧企業数、広告接触企業数、ホワイトペーパー閲覧数などがKPIになります。

接点を広げる段階では、対象企業内の関与者数、複数部門からの反応、資料ダウンロード数、メール開封率などが指標になります。

商談化を狙う段階では、インサイドセールスの接続数、商談化企業数、SQL数、案件化率、受注金額などを追う必要があります。

ABMでは、リード数だけをKPIにすると、本来狙うべき企業へのアプローチが弱くなる可能性があります。どの段階で、どの企業に、どのような反応を期待するのかを明確にしたうえで、KPIを設計することが重要です。

5.ABM・カテゴリーマーケティングの立ち上げには、施策設計と優先順位整理が重要

ABMは、重要度の高い企業に営業・マーケティング活動を集中させる手法です。特に大企業向け営業では、ターゲット企業を決めるだけでなく、どの部門・役職者に、何を伝え、どの施策で接点を作るかを設計することが重要です。

今回紹介した事例でも、リード数だけでなく、ターゲット企業との接点数や関与者数、商談化企業数などを重視し、広告・メール・SNS・インサイドセールスなど複数のチャネルを組み合わせていました。

ABMで成果を出すには、ターゲット企業を決めた後のアプローチ方法やメッセージ、施策の優先順位まで整理することがポイントです。

ABM・カテゴリーマーケティング立ち上げ支援では、ターゲット企業へのアプローチ設計から、課題認識を生むメッセージ設計、営業・マーケティングの連携体制づくりまで支援します。



大企業向け営業で、狙った企業との接点づくりや商談創出に課題を感じている方は、ぜひ資料をご覧ください。

本コラムの作成・編集者

ターゲットメディア株式会社 BtoBマーケティング研究チーム

私たちは、「日本のBtoBマーケティングをアップデートする」をミッションに活動する専門家チームです。
BtoB領域に特化して、17年以上・支援社数200社以上のマーケティング支援を手掛け、そこで蓄積された成功事例や実践的なノウハウを、現場で奮闘するマーケターの皆様にお届けしています。
チームには、戦略コンサルタント、データアナリスト、コンテンツ制作のプロフェッショナルが在籍し、多角的な視点から成功のヒントを発信します。

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