エンタープライズセールスとは?強い営業の個人技を組織の勝ち筋に変える方法

「エンタープライズセールス」と聞くと、「大企業向け営業」や「高額商材を扱う営業」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
もちろんそれらは一つの特徴ではあります。しかし、本質は企業規模や商材価格ではありません。

エンタープライズセールスとは、多くの関係者が関わる複雑な意思決定プロセスを理解し、顧客企業の課題解決を長期的な視点で支援する営業活動です。そのため、営業担当者一人の提案力だけでは成果を出し続けることは難しく、組織として再現性のある営業プロセスを構築することが重要になります。

本記事では、エンタープライズセールスの基本的な考え方から、成果を出す営業担当者に求められる素養、そして営業マネージャーが取り組むべき組織づくりまでを体系的に解説します。

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目次
1. エンタープライズセールスとは?
2. エンタープライズセールスの特徴
3. エンタープライズセールスに向く人・必要な素養
4. エンタープライズセールスを個人技で終わらせてはいけない
5. エンタープライズセールスこそ、マーケティングが重要
6. 営業とマーケティングが連携する組織が成果を生む
7. まとめ|エンタープライズセールスは「仕組み」で強くなる

1. エンタープライズセールスとは?

エンタープライズセールスとは、大企業やエンタープライズ企業を対象にしたBtoB営業のことです。一般的には、従業員数や売上規模が大きく、複数部門・複数拠点を持つ企業に対して、高単価・長期契約につながる商材を提案する営業活動を指します。

ただし、エンタープライズセールスの意味を「大企業に高額商材を売る営業」とだけ捉えると、本質を見誤ります。

エンタープライズ企業では、商材の導入が現場の判断だけで完結しないことが多くあります。そのため、営業担当者には、商品を説明するだけでなく、顧客企業の課題や意思決定プロセスを理解しながら、関係者が納得できる形で提案を進めることが求められます。


なぜ今、エンタープライズセールスが注目されているのか

エンタープライズセールスが注目されている背景には、BtoB企業の成長戦略の変化があります。

リードを多く獲得しても、商談や受注につながらなければ売上は伸びません。特にBtoB領域では、自社にとって取引価値の高い企業を明確にし、その企業群に対して計画的にアプローチする重要性が高まっています。

大企業との取引は、1社あたりの売上規模が大きく、継続契約や取引拡大につながる可能性もあります。そのため、エンタープライズ企業を開拓できるかどうかは、BtoB企業の成長に大きな影響を与えます。

一方で、大企業の開拓は難易度が高く、従来の営業手法だけでは成果が出にくい領域でもあります。だからこそ、エンタープライズセールスの考え方が注目されています。

SMB営業・ミッドマーケット営業との違い

エンタープライズセールスは、SMB営業やミッドマーケット営業と比べて、対象企業の規模や意思決定の複雑さが異なります。

SMB営業は、比較的小規模な企業を対象にした営業です。意思決定者が限られることも多く、課題が明確であれば比較的短期間で導入判断が進む場合があります。
ミッドマーケット営業は、中堅企業を対象にした営業です。SMBよりも組織構造は複雑になりますが、エンタープライズ企業ほど関係者が多くないケースもあります。

一方、エンタープライズセールスでは、意思決定者が複数存在し、商談期間も長くなりやすいです。導入にあたっては、現場の利便性だけでなく、投資対効果、セキュリティ、既存システムとの整合性、社内稟議など、さまざまな論点が検討されます。

2. エンタープライズセールスの特徴

エンタープライズセールスには、一般的な営業活動とは異なる特徴があります。特に大きいのは、意思決定に関わる人数が多いこと、顧客の業務課題だけでなく経営課題まで理解する必要があること、商談期間が長くなりやすいことです。

これらを理解しないまま、通常の営業活動と同じようにアプローチしてしまうと、商談が途中で止まったり、顧客企業の中で優先順位が上がらなかったりする可能性があります。

複数の関係者が意思決定に関わる

エンタープライズセールスでは、目の前の担当者だけを説得しても商談が進むとは限りません。

大企業では、現場担当者、部門責任者、経営層、情報システム部門、購買部門、法務部門など、複数の関係者が意思決定に関わります。それぞれの立場によって、重視するポイントも異なります。

そのため、エンタープライズセールスでは、誰が意思決定に関わるのか、どの関係者が何を重視しているのかを把握しながら提案を進める必要があります。

顧客の業務課題だけでなく、経営課題まで理解する必要がある

エンタープライズセールスでは、顧客の表面的な要望を聞くだけでは不十分です。

たとえば、「業務を効率化したい」という要望の背景には、人手不足、利益率改善、DX推進、ガバナンス強化など、より大きな経営課題があるかもしれません。

顧客企業の業務構造や経営方針を理解したうえで提案できれば、単なる機能説明ではなく、「なぜ今この取り組みが必要なのか」を伝えやすくなります。

そのため、エンタープライズセールスでは、自社商材の知識だけでなく、顧客の業界、事業構造、業務プロセス、組織体制、経営課題への理解が求められます。

商談期間が長く、継続的な関係構築が求められる

エンタープライズセールスでは、初回商談から受注までに時間がかかることが少なくありません。

社内共有、部門間調整、予算化、稟議、他社比較、契約条件の確認など、導入までに複数のプロセスを経る必要があるためです。

そのため、短期的な受注だけを前提にするのではなく、顧客企業の変化を追いながら、継続的に関係を築くことが重要です。検討が一度止まったとしても、適切なタイミングで情報提供を続けることで、再び商談が動き出す可能性があります。

3. エンタープライズセールスに向く人・必要な素養

エンタープライズセールスでは、営業トークのうまさや提案資料の作成力だけではなく、顧客企業の状況を深く理解し、長期的に関係を築く姿勢が求められます。

大企業の商談では、合理的な説明だけで意思決定が進むとは限りません。関係者ごとの立場や不安も踏まえながら、提案を前に進める姿勢が求められます。

そのため、エンタープライズセールスで成果を出す人には、いくつかの共通する素養があります。

①仮説を立てて提案を組み立てられる

エンタープライズセールスでは、顧客から言われた課題にそのまま応えるだけでは不十分です。

顧客企業の業界動向、経営方針、組織体制、既存の取り組みなどを踏まえ、「この企業は今、こういう課題を抱えているのではないか」という仮説を持って商談に臨む必要があります。

仮説があることで、ヒアリングの質が上がり、提案の方向性も明確になります。

②顧客課題を深く掘り下げられる

顧客の表面的な要望の奥には、より大きな業務課題や経営課題が隠れていることがあります。

エンタープライズセールスに向いているのは、顧客の言葉をそのまま受け取るのではなく、「なぜその課題が起きているのか」「なぜ今取り組む必要があるのか」を考えられる人です。

③長期的に信頼関係を築ける

エンタープライズセールスは、短期間で受注が決まるとは限りません。

検討期間が長く、予算化や稟議に時間がかかる傾向にあります。そのためすぐに案件化しない場合でも、相手企業の変化を追い、必要な情報を提供しながら関係を育てていく姿勢が求められます。

短期的な売り込みではなく、長期的に信頼される存在になることが重要です。

④論理性だけでなく、相手の不安や感情にも目を向けられる人

エンタープライズセールスでは、論理的に正しい提案をしても商談が進まないことがあります。

導入関与担当者が、失敗を恐れている、上司に説明する材料が足りない、他部門を巻き込むことに不安があるなど、意思決定には感情的な要素も影響します。

そのため、相手の立場や不安を想像し、社内で前に進めやすい状態を作ることが大切です。

⑤社内外の関係者を巻き込める

エンタープライズセールスは、営業担当者一人で完結するものではありません。

顧客企業側では複数の関係者が意思決定に関わり、自社側でもマーケティング、インサイドセールス、カスタマーサクセス、プロダクト部門などの協力が必要になることがあります。

自分一人で抱え込まず、必要な関係者を巻き込みながら商談を前に進められることも、重要な素養です。

このように、エンタープライズセールスには高度な素養が求められます。
ただし、こうした素養を一部の営業担当者だけに頼ると、成果は属人化しやすくなります。

4. エンタープライズセールスを個人技で終わらせてはいけない

エンタープライズセールスでは、個人の力量が成果を大きく左右します。
経営課題を捉え、相手の懐に入り、キーパーソンを見極め、社内政治を読みながら商談を前に進められる営業担当者は、大企業開拓で大きな成果を出します。

その意味で、強い個人営業は非常に重要です。むしろ、ポイントをつかめていない組織よりも、一人の優秀な営業担当者の方が成果を出すこともあります。

しかし、企業としてエンタープライズセールスを強化するなら、その成果を個人技のまま終わらせてはいけません。

属人化した営業は組織の成長を止める

属人化した営業には、いくつかのリスクがあります。

まず、担当者が変わると商談の質や検討推進スピードが落ちます。顧客企業の背景、関係者の状況、過去のやり取り、提案の文脈が営業担当者の頭の中にしか残っていない場合、引き継ぎがうまくいきません。

さらに、マーケティングやインサイドセールスとの連携も難しくなります。どの企業を狙うべきか、どのメッセージが刺さるのか、どのタイミングで接点を作るべきかといった知見が共有されなければ、組織全体の施策に活かせないからです。

エンタープライズセールスを属人的な活動のまま放置すると、成果は一部の営業担当者に依存し、組織としての成長が止まりやすくなります。

成果が出る営業には「共通する勝ちパターン」がある

優秀な営業担当者の動きには、共通する勝ちパターンがあります。

たとえば、狙う企業の選び方です。成果を出す営業は、ただ大企業だからという理由でアプローチするのではなく、自社が価値を発揮しやすい企業を見極めています。

また、商談前の準備にも違いがあります。顧客企業の事業内容、経営方針、組織構造、過去のニュース、業界課題などを踏まえたうえで、仮説を持って商談に臨みます。

さらに、提案の進め方にも特徴があります。単にサービスの機能を説明するのではなく、顧客企業にとって「なぜ今この課題に取り組むべきなのか」を言語化します。担当者だけでなく、上司や関連部門が納得しやすい材料も用意します。

こうした動きは、一見すると個人の勘や経験に見えます。しかし、分解すれば組織で学べる要素が多く含まれています。

勝ち筋を言語化・標準化することが営業マネージャーの役割

営業マネージャーの重要な役割は、強い営業担当者の勝ち筋を言語化し、組織で再現できる状態にすることです。

・どのような企業を優先しているのか。
・どの情報を見て仮説を立てているのか。
・初回商談で何を確認しているのか。
・どのタイミングでキーパーソンを巻き込んでいるのか。
・どの資料や事例が社内稟議を後押ししているのか。
・失注した案件では、どこで意思決定が止まったのか。


こうした情報を整理し、チームで共有することで、個人の経験は組織の知見になります。

もちろん、エンタープライズセールスを完全にマニュアル化することはできません。顧客ごとに事情は異なり、営業担当者の判断力も必要です。
しかし、勝ち筋を言語化し、標準化できる部分を増やすことで、組織全体の営業力を高めることができます。

重要なのは、個人技を否定することではありません。強い営業が持つ顧客理解、課題提起、合意形成の進め方を組織に蓄積し、チームで活かせる状態にすることです。

エンタープライズセールスとは?強い営業の個人技を組織の勝ち筋に変える方法

5. エンタープライズセールスこそ、マーケティングが重要

エンタープライズセールスというと、営業担当者の提案力や交渉力に注目が集まりがちです。

もちろん、顧客の経営課題を捉え、関係者を巻き込みながら商談を前に進める営業力は重要です。
しかし、大企業の開拓では、営業担当者の個別アプローチだけでは限界があります。

新規接点の獲得、長い検討期間中の関係維持、複数関係者への情報提供には、マーケティングとの連携が欠かせません。

マーケティングは、営業の代わりに商談を進めるものではなく、営業が成果を出しやすい状態を作るための土台です。

エンプラ営業は新規接点を獲得することが難しい

エンタープライズ企業では、そもそも新規接点を作ることが難しい場合があります。

代表電話や問い合わせフォームからアプローチしても、目的の部署や担当者にたどり着けない。メールを送っても反応がない。展示会やセミナーで名刺交換をしても、本当に狙いたい企業のキーパーソンとは限らない。

このように、エンプラ営業では「会いたい企業に、会いたい相手として接点を持つ」こと自体の難易度が高くなります

そのため、営業担当者が個別アプローチだけに頼るのではなく、マーケティングによって商談前から顧客との関係を作っておくことが重要です

記事、ホワイトペーパー、セミナー、導入事例、広告、メールなどを通じて、ターゲット企業に継続的に情報を届けることで、顧客が課題を感じたときに自社を想起してもらいやすくなります。

長い検討期間でも接点を維持できる

エンタープライズセールスでは、初回商談から受注までに時間がかかることが少なくありません。

社内共有、予算化、稟議、他社比較、部門間調整など、意思決定までに多くのプロセスがあるためです。検討が一度止まり、数カ月後に再開することもあります。
この長い検討期間を、営業担当者の個別フォローだけで維持するのは簡単ではありません。

そこで、マーケティングの出番です。

・メールマガジンで関連情報を届ける
・ホワイトペーパーで検討テーマを深めてもらう
・セミナーで最新事例を共有する
・導入事例で社内説明の材料を提供する


こうした情報提供を続けることで、検討期間が長くても顧客との関係を維持しやすくなります。

複数の意思決定者にアプローチできる

大企業の意思決定には、現場担当者だけでなく、部門長、役員、情報システム部門、購買部門、法務部門など、複数の関係者が関わります。

営業担当者が一人の担当者と接点を持っているだけでは、顧客企業全体の意思決定を動かすには不十分です。

マーケティングを活用すれば、関係者ごとの関心に合わせて情報を届けることができます。

・現場担当者には業務課題に関するコンテンツを届ける。
・部門責任者にはKPI改善や投資対効果に関する資料を届ける。
・経営層には市場変化や競争優位性に関する情報を届ける。
・情報システム部門にはセキュリティや運用面の情報を届ける。


このように、複数の関係者に対して、それぞれの立場に合った情報を届けることで、顧客企業の中に共通の課題認識を作りやすくなります。

エンタープライズセールスにおけるマーケティングは、単なるリード獲得のための活動ではありません。

営業が商談で行っている課題提起や信頼形成を、商談前から支える役割を担います。
営業担当者の個人技を補完し、組織として勝ち筋を再現するためにも、マーケティングとの連携は欠かせません。

エンタープライズセールスとは?強い営業の個人技を組織の勝ち筋に変える方法

6. 営業とマーケティングが連携する組織が成果を生む

エンタープライズセールスで成果を出すには、強い営業担当者の育成だけでなく、その知見を組織で活用できる状態を作ることが重要です。

そのためには、営業とマーケティングが同じターゲット企業を見ながら、誰に、どのような課題提起を行い、どのように商談につなげるのかを共通認識として持つ必要があります。

具体的には、次のような体制づくりが求められます。

・高LTV顧客を明確にし、狙うべき企業を定める
・営業とマーケティングが同じターゲット企業を見られる状態を作る
・顧客企業に届けるべき課題提起やメッセージを整理する
・商談で得た知識・知見を蓄積し、次の施策に活かす
・マーケティング施策と営業活動を連動させる


これらを整えることで、営業担当者個人の経験を、組織全体で活用できる営業・マーケティングの仕組みに変えていくことができます。

7. まとめ|エンタープライズセールスは「仕組み」で強くなる

エンタープライズセールスで成果を出すには、顧客課題を深く理解し、長期的に信頼関係を築きながら、社内外の関係者を巻き込む力が求められます。

一方で、こうした成果を一部の優秀な営業担当者の個人技に依存させてしまうと、組織として再現することはできません。強い営業の勝ちパターンを言語化し、マーケティングと連携しながら、組織全体で活用できる状態にすることが重要です。

大企業開拓を継続的に強化したい場合は、高LTV顧客の定義やターゲット企業の設計、営業・マーケティング連携の仕組みづくりから見直していきましょう。

エンタープライズセールスにマーケティングを

ターゲット企業の選定が営業現場の経験や勘に頼っている、リード獲得はできているものの商談・受注につながりにくい。

このような課題がある場合は、ABMやカテゴリーマーケティングの考え方を取り入れ、狙うべき企業と訴求すべきメッセージを見直すことが有効です。

ターゲットメディアでは、高LTV顧客の定義、ターゲットアカウント設計、営業・マーケティング連携の仕組みづくりまで含めて、ABM・カテゴリーマーケティングの立ち上げを支援しています。

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本コラムの作成・編集者

ターゲットメディア株式会社 BtoBマーケティング研究チーム

私たちは、「日本のBtoBマーケティングをアップデートする」をミッションに活動する専門家チームです。
BtoB領域に特化して、17年以上・支援社数200社以上のマーケティング支援を手掛け、そこで蓄積された成功事例や実践的なノウハウを、現場で奮闘するマーケターの皆様にお届けしています。
チームには、戦略コンサルタント、データアナリスト、コンテンツ制作のプロフェッショナルが在籍し、多角的な視点から成功のヒントを発信します。

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